251023 美を求める心 全作品21 小林秀雄 (著) -新潮社

美を求める心 全作品21 小林秀雄 (著) -新潮社

表紙帯にある、『すみれの花を、黙って一分間眺めてみよう。諸君はどれほどたくさんなものが見えてくるかに驚くでしょう』という言葉。

散歩をしている時に、ふと道端を見るとすみれの花が咲いているのが目に入る。
その時に、『すみれの花だなぁ~』と考えてしまうと、もうそれはただのすみれの花で終わってしまう。
それ以上考えるのを止めてしまい分かった気になる。この言葉のポイントは、『黙って』にある。

例えば、テレビなんかで食レポがあって食事を口に入れた瞬間『ウマっ!』という人があまりにも多い。その一瞬で、それはもう美味しいものだと定義づけられ思考停止になってしまう。それは、周りにも伝播し否定しがたい事実となる。本当は、たった一口ではわからないそれ以降に感じるスープの奥行きであったり、美味しいけど苦手な部分だとか、より深いことが感じられなくなる。

何かを観る時にとにかく黙って一分眺めて観ろ、そうすれば違うものを感じることができるからというのがこの言葉の意味で
分かった気になってそれ以上思考しないことについて書かれた、バカの壁/養老 孟司でも同じようなことが言われていた。

学生の頃、建築行脚しながら下手なりにスケッチをしていた。安藤忠雄がそうしていたから真似ただけだったけど、本音では写すだけなら写真で良いのにって思っていた。
けど今回この言葉を知ることでスケッチの本質は写すことにあるのではなくて対象となる建築をずっと眺める口実(暇つぶし)にあるのだということに気付いた。
ただひたすらに、何もせず建物を見続けるというのも苦痛なもので、まわりからも怪しまれる。その問題を解決する口実としてスケッチはうってつけなんだなぁ~と。

◆観るというのは大事な行為です